人気ブログランキング | 話題のタグを見る
こんぴらさんにいってきました(1)
四国巡礼のメッカである金刀比羅宮。
現在のご本宮の建物は、
明治11年(1878)4月15日
再営正遷座の際に改築されたもので、
以後数度、
屋根の葺き替えにともなう
「遷座祭」
というものが行われてきた。

今回の「遷座祭」においては、
従来のような屋根の葺き替えを主とした内容に止まらず、
明治11年に改築された現在のご本宮の建物そのものの要部を含めて、
社殿全体にわたってでき得る限りの改修を行い、
要するに永続が図られた。

永続。

もとより建築とは
建ち上がったその時点から
徐々に崩壊を始めるものであって、
それに改修の手を加えることは
建築が背負ったすべての「崩壊」に立ち向かうことと
同値であると考えていた。

だから今回、
永続の材料として選ばれた素材が
コールテン鋼であったことに
僕ははじめ、疑問を抱いた。
崩壊に新たな崩壊を重ねる作業にとって
材としてぎりぎりのところまで崩壊しきった鉄など
あまりに不向きだと感じられたからである。

しかしよく考えてみると
同じコールテン鋼にも、塗装処理の有無で二種類あり
それぞれが別の役割を担いながらも
視覚的には全く区別のつかないテクスチャーとして連続しているのではないかと
思うようになった。
そのまま用られているものは雨水に打たれることで年月とともに錆を垂らし、
それが同系色の土へ浸透し模様を生み出す。
それと塗装処理を施されたものとが、ガラス一枚を隔てて内部へと連続することで、
「時間」を「切る」ものとしての大ガラスが表出してくるのである。

錆とガラスの建築、という印象だった。
by yuichikov | 2004-06-03 20:37 | >Thoughts
<< こんぴらさんにいってきました(2) 六月病 >>